TALES OF THE ABYSS
If story...
Ver.Jade
※ 管理人的脳内設定注意
ゲーム中の各コンタミネーションイベント、および大爆発に関するイベントより、ED で帰ってきたのはレプリカ(ルーク)の記憶を取り込んだ被験者(アッシュ)で、肉体も意識もアッシュであると仮定しています。
あの子どもは、空に溶けてしまった。
知らなかったとはいえ一度は世界の崩落に手を貸し、その世界に見放され、それでも移ろう景色に心を動かし、息づく人々を慈しみ、他の誰より世界を愛した子どもは、ただ記憶だけを残して溶けてしまった。ひとりの子どもの覚悟と決意、数え切れないほど多くの犠牲を食い潰しながら回る世界。醜く、しかしどうしようもなく美しい世界を生きたジェイドが、譜石のかけらも浮かばない青空を見上げる。
タチの悪い冗談か、出来損ないの喜劇を見せられているような気分だった
―――いやこの場合、下手くそな喜劇役者にでもなった気分、と言ったほうが正しいのかもしれない。成り立ちも仕組みもまったく異なる世界で、しかしジェイドは生きている。
「・・・・・・・・・馬鹿馬鹿しい」
ジェイドは手元に広げた本をぱたん、と閉じた。普段、厳重に鍵をしてひっそり眠らせているはずの記憶に触れて平然と本を読み進めていけるほど、あれはジェイドにとって穏やかではない。自身に対する深い悔恨と憤り、大切な友人を失った寂寞、そしてそれらを糧に得た安寧は、彼の感情を確かに揺さぶる。
低い軌道で横切る冬の太陽が、緩やかな日射しを部屋の中に伸ばしていた。マンションの一室から眺める空は何に遮られることもなく窓の外に広がり、夏のそれより透明感を増しながらジェイドの思考を侵す。軍本部にあった執務室、小さな窓からのぞく青空。子どもの気配は、いつだってジェイドの傍にあった。膝の上でころりと丸くなり、健やかな寝息を立てている彼の養い子。子どもは、昨日で七歳になった。
頭の輪郭をなぞるように漆黒の髪を梳く。ふくふくとして赤い頬、くちびるをふにゃふにゃと弛ませる子どもは至極幸せそうな顔で惰眠を貪っている。自身の背負った罪の重さに苛まれ、悪夢に飛び起きることはない。ジェイドの服の裾を子どもの小さな手が握っている。何かに怯え、彼の前で申し訳なさそうに目を伏せることはない。膝の上で器用に寝返りを打った子どもの毛布をかけ直してやる。「世界のために死んでくれ」 などと告げられることはない。
―――あの子どもは、まだ七歳だったのだ。
「・・・・じぇいど・・」 頬に触れた小さな手。眠気に溶けた夜色の瞳が、茫洋とジェイドを見上げている。
「ああ、すみません。起こしましたか?」
「・・ジェイド、どしたの?」
「? 何のことです」
「なんか、こわいかおしてる」
この世界は “こう” あるために、子どもの犠牲を必要とはしていない。崩落から人々を救うためにジェイドが世界を飛び回る必要もないし、軍人として国を守る必要もない。今のジェイドに出来ることといえばせいぜい、子どもがソファから転げ落ちないように姿勢を保っておくことぐらいだ。
「・・・・・。もしも、もしも私が、」
「うん?」
「
―――いえ、なんでもありません。忘れてください」
仮定の話すら口にできない私を、あの子どもは笑うだろうか。問いかける口も言葉も術もない。
novel
writing date 091025 up date 100110
もしもカノ猫的保護者ジェイドに、アビス本編の記憶があったら。ルークが大好きです(読みゃわかる)
TALES OF THE ABYSS
If story...
Ver.Luke
「いーい天気だなー」
誰にともなくそう呟いて、ルークは両腕を空へ突き上げる。秋風に吹かれる紅の髪をかきあげ、そのままぐぐっと背伸び。見上げた空は青く澄み渡っていて、白い雲がぷかぷか浮かんでいた。によると、こういう日のことを “小春日和” というのだそうだ。・・春でもないくせに。
「おっせー、何してんだよー?」
「ルークが早いんですー。もっとゆっくり歩いてよー」
後ろからの声が追いかけてくる。思ったより遠くから届いたそれを振り返れば、歩く意思を手のひらからこぼしたらしいが、ぼんやりと眼下の河川敷を眺めていた。釣られるようにルークも視線を落とす。ただひとつの白球を追って茶色の地面を駆け回る姿に、ルークはその翡翠の双眸を細めた。フッと呼気を飲み込む。楽しそうだなとか元気だなとか、巡る思いはやがてひとつへ帰結する
―――それはただひたすらに、誤魔化しようもないほどの。
あのとき見上げた空の青さをルークは覚えている。あのとき見渡した静謐の景色を覚えている。あのとき見返した仲間たちの顔を覚えている。告げられた言葉を覚えている。紡がれた願いを覚えている。・・なのに、あのとき自分が一体どんな顔をして、どんな言葉を仲間たちに返したのか、ルークははっきりと覚えていなかった。自分はちゃんと笑えていただろうか、泣いてなどいないといいのだけれど。だって、
「・・なぁ、ルーク」
「んぁ、なんだよ?」
「かえりにさ、ボールとグローブ買って帰ろうか」
「・・・・・・・・・・・おー、いんじゃね?」
「うん、じゃあ決定」
だって、いま俺は笑えている。
だから、あいつらにも笑っていてほしい。
―――忘れてほしい、とは言えないけれど。
こんな体質になった自分を見たら、あいつらはなんて言うだろう。きっとアニスとナタリアの反応が一番すごくて、ティアなんかは羨ましいとか言い出すかもしれない。ガイやイオンはひとしきり驚いた後、それでもにこにこ笑って似合ってるとか言うのかも。ジェイドは・・・・・やめた、想像するのも怖すぎる。
みんなは、元気だろうか。それを知る手段をルークは持たないが、もしたった一つだけ尋ねられるのならばそれを聞きたかった。辛いこと悲しいこと痛いこと苦しいことがたくさんあったけれど、みんなに会えてよかった、みんなと一緒に旅が出来てよかった。こうやって猫になってしまった今でも、思い出したようにあの時の夢を見てうなされる。見下ろす手のひらの向こうに景色が透けて見えた気がして、時々足が竦む。でもそれらを全部ひっくるめて、たった一つだけ言葉を伝えるなら。
ありがとう、と伝えたい。
「ルーク、夕飯なにがいい?」
「エビチリ!」
「調子のんなよ猫のくせに」
「今は猫じゃねー」
憮然とした表情で立ち止まる。そこまで小走りで戻ったルークは、ますます嫌そうな顔をするの肩に腕を回してズカズカ歩き出した。
「ちょ、ルークさんそれセクハラです」
「ん? せくはらって何だ?」
「・・・・・・なんでもない」
今日はこれからボールとグローブを買って、ここに戻ってきてキャッチボールをするのだ。今は青い空が紅く染まる頃、はしゃぎ疲れた体を引きずって商店街へ繰り出して買い物を済ませる。そして、白いビニール袋をぶら下げて、色んな話をしながら二人で家へ帰るのだ。そんなごくごく普通の “当たり前” が、ルークにはひどくいとおしい。
そんな気持ちを教えてくれたみんなに、たった一つだけ言葉を伝えるなら。
novel
writing date 091227 up date 100110
もしもカノ猫的にゃんこルークに原作の記憶があったら。暗いイメージにしたくなかった私の我侭です。
機動戦士ガンダム00
If story...
Ver.Tieria
平和のなんたるかを、ティエリアは知らなかった。当たり前だ。人類に、世界に変革をもたらすイノベイターとして生を受け、イオリア・シュヘンベルグの理念の下で呼吸してきたティエリアが、ただ徒に食い潰されてばかりの平穏や安寧を理解できるはずがなかった。その必要があるとも思わなかった。彼の、否、ヴェーダによって与えられた彼の目的は戦争の根絶。平和を求めていたのは、彼ではない、他のマイスターやソレスタルビーイングの面々だった。彼は特に、平和を求め、願っていたわけではない。
規則正しく、几帳面に並んだ文字列を深紅の瞳がスルスルと追う。ページの隅に、まるでマーキングか何かのように付けられた三角の折り目。あけた窓から滑り込む秋風がティエリアの髪を撫でていく。視界にちらつく髪を耳にかけ、煩わしそうに溜息をついたティエリアの膝の上で、同じく髪に目元をくすぐられたらしいそれがもぞもぞと蠢く。
ティエリアにとっての日常とはミッションをクリアすることで、それはつまりガンダムと共にあるということだった。知らないもの、理解できないものを求めることはできない。だから彼は、沙慈・クロスロードが抱き、苦悩し続けたダブルオーライザーの操縦席に座ることへの葛藤を結局理解できなかった。最後の、最期まで。
ベッドの縁に背中を預け、長い脚を投げ出して座っていたティエリアの、その膝を枕にしたのはこの阿呆が初めてである。つい十五分前までは彼のベッドに我が物顔で寝転がり、同じく本を手にしていたはずなのだが、ふと気がついたら傍らで、というか彼の足を枕にしてこれは猫のようにまあるくなっていた。本来の意味での枕元に、これが今まで手にしていた文庫本が適当極まりなく伏せられている。一体誰のものだと思っているのか。一体誰の部屋だと思っているのか。・・一体この俺を、誰だと思っているのか。
「・・・・おい、」
「眠いなら布団で寝ろ。邪魔だ」
「・・・・・・・・・・・・」
重い溜息がそれの前髪を揺らす。むずりと震えるまぶた。
「
―――・・重い」
ここにだって戦火は絶えない。ティエリアがこうして読書をしている間に銃弾を浴びて散る命があって、がこうして惰眠を貪っている傍らでテロリズムに傾倒する思想が蔓延っている。仮初の平和、造られた平穏の上に胡坐をかき、夥しい死体で裏打ちされた安寧。ままごとのような日常。愚鈍に流れる時間。
それらを切り捨てられなくなったのは、いつからだろう。
「。起きろ」
「・・んだよ、ひとがせっかく気持ちよく・・・・」
ふあふあと大あくび。目尻に浮かんだ涙をそのままに、ティエリアを見上げる漆黒は茫洋として宙をぼんやり漂っている。今にも再び眠りに落ちてしまいそうなの意識をつなぎとめるため、ティエリアは彼女の鼻をぎゅむと摘んだ。
「ちょ、いふぁいんれすけど」
「痛くしている」
「・・・・・・・・・・・・」
「寝るならちゃんとベッドを使え。今年の風邪は馬鹿でも引くそうだ」
しょぼしょぼの目を二、三度まばたきさせたが舌打ちまじりに小さく呟く。
「このツンデレめ、」
「・・なんだと?」
「なんでもありませんー」
この両手は真っ赤で、触れる資格はないなどと、生ぬるい感傷に浸るような安っぽいヒロイズムは持ち合わせていない。理解して引き金を引いた。自覚してガンダムを駆った。後悔はない。絶望もない。わたしは確かに、人の可能性というものを信じている。
「ティエリアさぁ、今日のゆーはんクリームシチューでおっけー?」
「・・あと一時間したら起こすぞ」
「ん、よろしくよー」
novel
writing and up date 100110
もしもカラフル的ティエリアに原作の記憶があったら。・・結局こいつらはこんなんです。