第6話
その日の夜。
がお風呂に入っている時間に、その会議は開かれた。
「――――はい、ということで突然だが作戦会議を開始する」
「「はぁあ?」」
どこから調達してきたのやら、銀時はホワイトボード背に、至極真面目な顔に眼鏡をかけている。
突然切り出された話に、新八と神楽の二人は不信感をあらわにして。
「いきなりなんなんすか、銀さん。大体作戦会議って・・ちゃんと家賃払ったんだから必要ないじゃないすか」
「そうアル! 下のクソばばあは攻めてこないはずあるヨ」
「ちっがぁああう!」
ばん、とデスクに両手を叩きつけた銀時は、その音と銀時の妙なテンションに引き気味の二人を睨みつけた。
そして、口から漏れる元から少ないであろうシアワセがいっぺんに逃げていきかねないほど盛大なため息。
新八と神楽はお互いに見やり、同時に思い当たる節があるかどうか記憶の糸を手繰り寄せる。
最近は銀時が買ってきたお菓子を黙って食べたり、銀時に内緒でパフェを食べに行ったりしていない。
銀時の広いようで狭い堪忍袋を破裂させるようなことはしていないはずなのだけれど。
「のことだ」
いつまで待っても彼女の名が出てこないことに焦れた銀時は結局自分で議題を二人に与えた。
彼の予想では、ここで二人はがんがんに食いついてくる―――はずなのである。
「「あぁ、さんがどうかしたんす(アル)か?」」
確かに、二人の表情には幾分か明るさが戻っている。
だがしかし、銀時が想像していたようながっつくようなツッコミがない(こう・・・少女マンガみたいな、ラブコメ?みたいな)。
「あ、もしかして銀さん、今日なんかまた変なことしたんじゃないでしょーね?」
「何ぃッ!? 私のになんかしたら、たとえ銀ちゃんでも許さないアル!」
「ちげぇよ!!」
新八の台詞に"また"がついていることとか、神楽が"私の"呼ばわりしていることとかに違うと言っているのではない。
気に食わない部分であることは確かだが。
「俺さァ・・・・・惚れちまったかも」
「「は?」」
二人はぴたりと動きを止めた。口は"あ"の形で固まり、まるで不出来な紙粘土のお面だ。
「だ、だれにアルかッ!?」
「・・・・ま、まさか銀さん・・・・ッ」
この文脈で他の誰かに惚れたなどと言い出すやからがいたら、そいつはとんでもなく空気の読めない間抜けだけだ。
そして銀時は、そんな間抜けではない。
「うっそぉおおぉお!!ま、まじっすか、銀さん!?」
「この人なに言ってるアルかーっ!?」
「あーあー、うるせぇなお前ら。んだよ、俺がに惚れるのそんな問題あるってかコノヤロー」
「あんた自分を幾つだと思ってんすか!!」
「あー?だって19歳だぜ?犯罪とかにゃならねーだろ」
「なる」
「・・・んでだよ」
「銀ちゃんだから」
「神楽黙って聞いてりゃてめぇコノヤロー!!」
神楽に殴りかかろうとしていた銀時だが、はっとして時計を見遣る。
そろそろが風呂からあがってくる時間だ。銀時は苦心して溜飲を下げる。
「ってコトだから、お前ら協力しろ」
「そんなんやですよ」
「そうアル!」
「なッ!何だよお前らその反応!?銀さんと、お似合じゃねーか」
「全然そんなこと思いませんけど。・・・てゆーかまぁ、僕は協力もしないかわりに邪魔もしないよーにしますよ、たぶん」
もしも、銀時ではなくたとえば真撰組の彼らのうちのだれかが彼女を落としたとしたら・・・
彼女を見ている限り、銀時とも他の誰かともくっつく可能性は限りなくゼロに近いような気はするが、
それでも保険をかけておくに限る。
はもう新八にとっても、万事屋に欠かせない人なのだ。
「私は邪魔するアルけどなっ!」
「は、言ってろ胃袋拡張チャイナ娘が」
――――こうして、は平穏な日々を自分のあずかり知らぬところで失った。
novel
はい、大江戸のらくら記第3章完結です。いかがでしたでしょうか。
銀さん動き始めそうな感じです。さァどうなるでしょうねぇ・・・上手く立ち回ってくれるでしょうか。
毎度毎度のことながら、ご意見ご感想をお待ちしております。
浮かれてペンが進むこと間違いなしです。尻を叩いてやってください。
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07.03.30 第3章 一部改訂