第4話
暗闇のなかで、銀時は目を覚ました。
上半身を起こすとかけられていた薄手の毛布がずり落ちる。
目をこすって周囲を窺ううちにだんだん目が闇になれてきた。
「(・・・・万事屋、だよな)」
自分が寝室として使っている和室である。布団がしかれ、毛布までかけられているが寝た記憶がない。ずき、と頭が痛みに呻いた。小さく舌打ちをしてさらに周囲を見渡し、銀時は驚愕に叫びそうになる。
となりに、すやすやと眠るがいた。
「(な、なななんでコイツがここにいんだよ!? そーゆー関係? もしかしてそーゆー関係に突入しちゃったの!? 裏は書けないとか言っておきながら、10000打記念だからとかいってその世界に一歩を踏み出しちゃったわけ!?)」
だが、よくよく見れば、同じ布団に入っているわけではなく、は畳の上で寝こけている。
自分にも、にも着衣に乱れはない。
チッ、惜しい。
落ち着いてよーく考えてみると。
「(・・俺、ガキに戻ってた・・・・のか?)」
だんだん記憶がよみがえってくる。
8歳くらいのガキになぜだかわからないが戻ってしまい、同じくガキになってしまった土方や沖田と共にに世話になり、そこで話を―――・・・。
「(話をしたのは覚えてんだけどな・・・なんでここにいるのかがわからねぇ)」
銀時にそこからの記憶がないのは、彼が眠ってしまったからである。
ぽかぽかと日の光が暖かい縁側で、多少殺伐とした話ではあったものの、穏やかなの声を聞いているうちに3人ともだんだん睡魔に襲われて。
沖田はの膝の上で、土方と銀時はを背もたれにしてすやすやと寝入ってしまったのだ。
土方と沖田は近藤と山崎がおぶって帰り、銀時はがおんぶして万事屋まで帰ってきた。
にはかなりしんどい道程だったが、銀時がそれを知る由はない。
前々から気になっていたことだった。
どうして男の格好をし、どうして男言葉を使い、男のふりをするのか。癖なのかと思ったがそういうわけでもないらしい。
そう気付いたのはが万事屋に居候をしはじめてそんなに時間が経たないうちからだったが、だからといってワケなんか聞けるはずもない。
は万事屋に――銀時にそれだけ早く、またそれだけ深く、しっかりと根を下ろしてしまったから。
「・・拒絶されるのが怖ェってか・・・・俺ァ」
決して平穏な人生を送ってきたとは思っていなかったが、どうやらその予想は銀時が勝手に繰り広げていた邪推よりもさらにハードなものだったらしい。
若干19歳にして彼女の核となり、芯となっている強さ。
きっとそれは銀時が知らないの過去が作り出したものに他ならず、きっとそれがなかったらはでなかったはずだ。
そうすると、おそらくを苦しめたであろう過去に感謝しないわけにはいかず、銀時は己の無力を苦く噛み締める。
けれど今―――は確かに、となってここにいる。
「(あー・・クソッ。眠れねぇっつーの!)」
がしがし、と頭を掻き毟り、結局銀時はそれまで自分がかぶっていた毛布をにかけて、居間のソファで眠る。
その朝、目覚めた彼は「心配かけてんじゃねーぞ、コルァアアア!」と神楽に手痛い報復をうけるわけだが、銀時は寝にくいソファにも関わらず、どこか幸せな夢を見る。
novel
10000Hit感謝感謝です! ここまで来ることが出来たのは、ひとえに皆様のおかげであります。
銀さんら3人が幼児化したからにはいつかきっと、主人公が小さくなることでしょう・・・ね。平穏とは程遠いところに住む彼らです。
「西の東雲」はこれからも、こんな調子でのらりくらりと日々を過ごしてまいります。ご覧くださった皆様がまたちょっと覗いてみるか? と思われるようなものを提供できたらなぁ・・と儚い希望を抱きつつ、しかしそれに近づいていけるよう頑張ります。
これからも、当サイトとのらくら記・妖奇談の出演者、そしてへっぽこな管理人ともども、よろしくお願いいたします。
writing date 07.04.05 ~ 07.04.17 up date 07.04.22 ~ 07.05.06