彼女と猫のこんな日常。

6-3



再び眠りについたルークの額に、水でぬらしたタオルを置く。頬を上気させるルークは高熱のためか、やはり酷く苦しそうで。どうにかしてやりたいが、ルークに風邪薬の類を飲ませていいのか非常に悩ましいところだ。だからといって医者につれていくのにも不安はあり、というか大体「医者」に診せればいいのか「獣医」に泣きついたほうがいいのかも曖昧で。こんなことなら、ジェイドかディストあたりに頼んでルークの身体検査をしてもらうべきだったと悔やましい。ルークの具合がよくなったら、なだめすかして騙くらかして引っ張っていこうとは決意する。

時刻は9時を回った。1時間目の講義ももう始まったことだろう。多少の後悔がないといえば嘘になるが、ルークを一人残して家を出たほうがずっと後悔するのだろうと思うと、自分も大概過保護だと笑う。子は親を見て育つ、という言葉を心の中で呟きながら、脳裏に浮かぶのはもちろんあの保護者である。

「・・
「目ぇ覚めた? ルーク」

熱に浮かされて、とろりとした翡翠がを見上げる。水でぬらしたタオルで額の汗を拭うと、ルークは気持ちよさげに瞼を閉じた。

「起きられる? 少しお腹になんか入れよう」
「・・腹、減ってない」
「それでも。ゆっくり少しずつでいいから・・な?」

ルークはまぁ、当たり前といっちゃ当たり前なのだが猫舌だ。あんまり熱くしすぎないようにしたお粥を手渡し、食べるように誘導する。白いご飯が7割ほどしか残っていない粥をさんざん自分の吐息で冷ました後、ルークはゆっくりとそれを口に運んだ。

「味、しねぇんだけど」
「熱があるからな。舌がおかしくなってるんだよ」
「ふーん・・・」

ゆっくりと。けれど一口ずつちゃんと食べるルークに思わず顔が緩む。頭をわしゃわしゃしてやりたい衝動に駆られたが、思い切り迷惑そうな目をされる気がして自重する。どこかルークと過去の自分が重なった。いけない、このままでは変態鬼畜メガネが敷いたレールを突き進むことになる。・・それだけは、回避せねば。

、学校行かなくていいのか・・?」
「うん、今日は休もうと思って」

ルークの負担にならないように、軽い調子で告げたつもりなのだけれど。くしゃりと表情を歪めるルークに自分の意図は伝わらなかったのだと苦笑する。普段の「今日サボっちまえよー」なテンションはどこへやった。

「スザクとルルーシュにも連絡してあるし、困ったことにはならないって」

―――多分。
己の胸に呟いた言葉が、ぐさりと心を抉る。頭ばかりいいルルーシュのことだ、スザクとの微妙に噛みあわない会話で自分があの体力バカに風邪を引いていると嘘をついていることにすぐ気付くだろう。おそらく真実を告げることはないと思うが、もしも万が一スザクにサボったことが・・いや、それよりも嘘をついたことがばれてみろ・・・「? そんなことして単位落としても知らないよ? ・・そうそう、言い忘れてたけど明日の分子生物学テストだって」と天使の微笑で、悪魔の制裁を加えてくれるに違いない。奴の正義感には時々、血も涙もない。

「でも、」
「大丈夫。俺を誰だと思ってんの、ルーク?」

食い下がるルークの額に、こつんと己の額をぶつける。じわりと熱が伝わって、やっぱりまだ下がっていないのかと落胆しながら、けれど表情には出さない。体の調子を崩した人間は、傍らにいる人間の動きに聡い。それが実際の言動でも、感情でも。だから出来るだけ、悪い方向に物事を考えないようにする。

「・・・うん、わかった」

よし、とルークの頭を撫でてもう一度休むように告げる。こくりとうなずいて、もぞもぞと布団にもぐっていくルークにはおかしなことに今、犬の耳が見える気がする。・・・気のせい、だろうか。

「あのな、
「んー? なに?」

ルルーシュに貸してもらった本――「一瞬で自分の夢を実現する法」・・・・何か悩み事があるなら言ってごらん大笑いしてやるから、と言ったら鳩尾に拳を埋められた。きっと本気だったのだろうが、正直そこまで痛くなくて、隠れ運動オンチなルルーシュが可哀想なのか、それとも痛くない自分が可哀想なのか判断できなかった――どこかしら胡散臭いにおいのするその本を手に、ルークの枕元に座る。すると、布団の隙間からルークの手が伸びてきて、おや?と思うよりも早く、彼の手がの服の裾を握った。

「本当のこと言うと、俺いまちょっと風邪引いてよかったかなーって・・」
「なんで? 体きついだろ?」
「うん、でも・・・今日は1日、と一緒に居られるし」

―――・・・ヤバイ、何この生き物。漫画やドラマなんかで、風邪を引いた人間はやたらと無防備で看病しているほうが色々と大変だ、みたいな状況はなかなか多く存在する。そんなベタな・・第一、体の調子を崩している人間に対してそんなこと言ってどうするんだとせせら笑っていたぐらいだが、なるほどこれは大変に攻撃力というか殺傷力が高い。いや、でもホラこれはルーク限定だし!、と心の中に呟いて、その意味のなさが身に沁みる。

「・・明日はこうはいかないからな?」
「わ、わぁってるよ!」
「ちゃんと休んで、体治したら・・今度また遊園地連れていってやるから」
「マジで?」
「マジで。ほら、お休み」
「・・ん。お休み、


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やっちゃったー・・・心のベクトルが指し示した方向に素直になったら、コードギアス友情出演です。基本的に原作を知らない人にも笑っていただけるように頑張って執筆を進めていますが、不安だらけですごめんなさい。友情出演とか言う割に、登場人物紹介にもきっちり顔を出していますし、これからもちょくちょく顔を見かけそうなお二人ですが、よろしければあの・・お付き合いの程を心よりお願い申し上げます。本当にあの、よろしくお願いします、はひ。

writing date  07.11.12 ~ 07.12.03    up date 07.12.04