火 スカート丈
のらくら私立銀魂高校では形式だけの制服検査が抜き打ちで行われることがある。
シャツはズボンにいれないとアウトとか、女子のスカート丈は膝上ぎりぎりまでが学校側のせめてもの譲歩だとか、色の付いたマニキュアはダメとか―――まぁ色々とあるのは確かだがそれは校長と教頭が小うるさくいうだけで、学校全体として守られている感じは少ない。
それぞれがかなり好き勝手に制服を着こなし、教師陣も“まァ別に好きにすればいーんじゃね?”というスタンス。
銀八も勿論そういうスタンスをとっており、上のシャツが出ていようと、足首までスカート丈があろうと、やけに老けた生徒が数名いようと、しかもその1人がストーカーだろうと、怪我をしているわけでもないだろうに顔の半分を包帯で覆った不良がいようと、ヅラがいようと・・・・最後のヅラ疑惑以外はまったく気に留めない。
が、そんな銀八にも許せない――いや、己のプライドにかけて許してはならないと思うことがある。
「コラ! おま、そのカッコどーにかしろっていつも言ってんだろーがッ」
「なんだよ、うるさいなァ。俺がどんな格好しようと、先生には関係ないだろー」
「あるわァアア! なにが悲しくて華の女子高生が学ラン着てんの見なきゃなんねーんだコラァアア!」
は、セーラー服ではなく、学ランで学校に通っていた。
「俺ァな・・がセーラー服着んのを、スゲェ楽しみにしてたんだぞ! 本編じゃあ男装が当たり前になっちまうし、さっきの1話目じゃ、なんかさらっとスルーしちまうし! しかも、お前イイ脚してるらしーじゃねぇか。それを準主役はってる銀さんが見ないなんてことは許されねェ・・・・って話聞けコラァアア!」
「スキップ!」
「は!? コラ、また俺飛ばしやがったな!?」
「偶然ですー。言いがかりはよしてください、土方さん」
「あッ、新八のクセに色変えるなんて生意気ネ!」
「新八のクセにって何!?」
「リバース」
「テメェふざけんなァアア!」
「旦那、ちょいと耳貸してくだせぇ」
わいわいと騒がしくなる3Zの連中をよそに、銀八のところへ歩いてきたのは沖田。
こういうとき、一番最初に話題に入っていき、どんどん悪乗りしていく沖田にしては珍しい態度に、銀八は不審の目を向ける。
コイツが関わると、ロクなことにならない。
「・・んだよ。どーせまたロクでもねぇこと「アイツの脚、のことなんですがねィ」
声を潜めた沖田に、ハッと銀八は目をやる。
教室は騒がしさばかりを増し、銀八と沖田に気が付く様子はない。
「・・で、どーなんだよ」
「イイ脚してますぜ。細すぎず、太すぎず・・ちょーどイイ肉付きでさァ」
「上は? 見てねェとか言っといて、実は見たんじゃねーのォ?」
「・・それァちょっと・・・・」
「いーじゃねぇか、俺と沖田クンの仲だろーがよォ」
「・・旦那がそう言うんじゃあ仕方ねェなァ。実は「沖田ぁ。ちょーっとコッチ来てくれる?」
ヤベェ、と顔を見合わせた二人の視線の先にいるのは、机を頭の上に掲げた。
教科書を入れておく引き出しの部分から、ボロボロと教科書やノートがこぼれていく。<その机の使い主である桂が、教室の隅っこで泣いていた。
「よ、よぉーし授業を再開すっぞー。あ、と沖田はそのままでいいからゆっくりやっちゃって」
「旦那、そりゃあねェや。元はといえば、旦那が聞いてき「はーい、じゃあ教科書46ページ開いてェ」
「先生」
▽ は 凍てつく視線を 使った!
▽ 効果は バツグンだ!
▽ 銀八 に 203の 精神的大ダメージ!
「ち、違うッ! 誤解だ!」
「・・何が誤解だって?」
「アレだよアレ・・・そう、沖田のバカヤローが聞いてもいないのにベラベラと・・・」
―――ジー・・、カチャッ
「・・ょーどイイ肉付きでさァ」
「上は? 見てねェとか言っといて、実は見たんじゃねーのォ?」
「・・それァちょっと・・」
「いーじゃねェか、俺と沖田クンの仲だ・・・」
―――ガチャッ
「オイィィイイ! 誰だ、誰だよ!? さっきの会話テープに録音してたの誰ェエエ!?」
「俺でさァ」
「こンの裏切り者ォオオ!」
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