第8話
「たっだい「「(さん)ーッ!!」」
「ぐはぁ・・・ッ」
意気揚々と万事屋銀ちゃんへと帰宅したを待ち受けていたのは、新八と神楽による強烈なタックルだった。
突然の攻撃歓迎に耐え切れず、は二人に抱きつかれたまま仰向けに倒れる。
「な、なななに?どしたの、お前ら?」
ぎゅう、としがみつく二人を見て、しかも彼らの尋常じゃない慌てふためきようには目を丸くする。
特に、神楽の抱きしめ方は関節技を決めているとしか思えない。
「・・心配してたんだよ、そいつら」
のっそりと部屋の奥から銀時が姿を現す。頭を掻きながら、興味なさそうに。
「心配・・?なんの「がなかなか帰ってこないことに決まってるアル!」
「そーですよっ!面倒に巻き込まれてるんじゃないかとか迷子になってるんじゃないかとか・・・すっごい心配したんですから!」
そんな大袈裟な、とは思う。
たしかに、買い物に出発したのは午後のあたま。
現在太陽は西の空を赤く染めていて、かなりの時間が経っていたことを教えてくれる。
年下ふたりにここまで心配される19歳というのはいささか情けないような気もするが、彼らの思いはの心をあったかくしてくれて。
「ごめんな。ちょっと、いろいろあってさ」
「「色々ってなんですか/なにアルか?」」
「と、とりあえず部屋入らね?さすがに背中が・・・」
ようやく部屋に入れてもらっただが、心配が限界値を超えたらしい二人はむしろ怒り心頭といった感じだ。
向かいのソファの片方に新八と神楽の二人が座り、もう片方にはが正座して座っている。
これではソファの意味がないじゃないかと思うが、
今の二人に口答えをすれば台所でふみふみする青竹の上に正座しろという命令が下りそうな気がしては危うく口を噤んだ。
デスクの椅子に腰掛ける銀時は板チョコをかじりながら、事の次第を見守っている
――つまり、助け舟を出してくれる気はないらしい。
「で、何があったんですか?」
そういって話を促す新八の言葉は、いつもより温度が低い。レンズの向こうの瞳が逃げるのは許さないと見張っている。
「俺さ、バイトっつーか・・・仕事するわ」
「え?」
予想もしなかったのだろう。これまで無関心を装っていた銀時も口が止まっている。
「真撰組のとこで、剣術の指南役をすることになったんだ。毎週火、木曜日と隔週の土曜日に屯所の道場で」
「・・・・ぇ、ちょっと待ってください」
ずれた眼鏡を押さえながら、新八がの言葉をさえぎる。
傍目にも混乱しているのが窺えるほどだ。
「剣術の指南役って・・さん剣術とかやるんですか?」
新八のほかに、神楽もそして銀時も興味を引かれたように身を乗り出しているから、はその経緯を話して聞かせる。
へぇ、とかほぉとか感嘆のため息が新八と神楽の口から漏れる。
話し終えたころには、二人の視線は尊敬と羨望に輝いていた。
「まぁ理由はわかったけどよー。銀さん納得できねぇな」
すごいヨ!姉御と負けず劣らずネ!!と騒ぐ神楽に釘を刺すように、銀時が幾分冷めた口調で言った。
は眉をひそめる。
「なんでだよ」
「真撰組だろー?多串くんとか沖田くんとかもいるんだよな、当然」
多串くん、というのが土方さんを表していることは、新八に教えてもらった。
「俺のがあいつらに手ぇ出されそうで俺ははんた「じゃあそろそろ夕飯の準備するか、新八」
「そうですね。今日は肉じゃがですよ」
「え、今のスルー?スルーなの?」
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