第1話
昼食を終えた万事屋銀ちゃんの面々は、今日もまた何もすることない暇を持て余していた。
銀時はソファに寝転がったままジャンプを読みふけっている。
その傍らで新八は新聞をひろげ、神楽は定春とともに今にも眠りに落ちそうで。
真撰組でのお仕事もない今日、
もまたそんな彼らと同じようにワイドショーを見ながらぐだぐだと時間をつぶしている。
「宇宙海賊春雨、か。この世界ってやることほんと派手っつーか大掛かりだよな。宇宙ってお前、って感じー」
「惑星間での仕事とかもありますしね。僕らには関係ないッスけど」
「、私が天人なこと忘れてるアルか?私もやることはハデハデよ?」
むくりと起き上がった神楽が、ソファの背もたれを越えて後ろからの首に抱きつく。
神楽は人とのスキンシップが多い(素手や傘を用いたケンカ、また激しいツッコミを含む)。
その中でも神楽のに対する触れ合いは群を抜いていて。
にぎゅうと抱きついたとき、拒絶されたことは今まで一度もない。
困ったような顔をすることはあっても、嫌そうな顔をすることはないし、頭を撫でて抱きしめ返してくれることも多い。
そんなとき神楽は心底嬉しそうな顔をする(嬉しさを表すために力をこめすぎて、絞めかけたこともある)。
いつだったか、嫉妬半分羨望半分で銀時がその理由を聞いたことがある。
すると神楽は瞬きを繰り返した後、晴れ晴れとした満面の笑みを浮かべてこう言った。
「はふしぎアルよ、銀ちゃん。お姉ちゃんみたいで、お兄ちゃんみたいで、でもマミーみたいアル!」
―――――ピンポーン
4人は一斉に玄関に顔を向ける。
家賃の支払いを迫りに来たのだろうか、という思いがよぎるが、そういう場合お登勢がチャイムを鳴らすはずがない。
「・・僕、出てみますね」
「おぉ。依頼主なら絶対逃がすなよ。今夜の夕食かかってんだからな」
そういう銀時の目は鋭いようでどこかどろりと濁っている。彼の精神を構成する糖分が足りないのだ。
「はーい。どうしましたか?」
「え、と・・・万事屋銀ちゃんって、ココですよね・・?」
玄関先に立っていたのはちょうどお妙と同じか、それより少し年下くらいの女性である。
綺麗に髪を結い上げ、白い肌を包む着物は上物。
不安げに新八と挨拶を交わす言葉の中には、かぶき町ではなかなかお目にかからない上品さを伴っている。
「銀さーん、依頼人のかたです。松です」
「ぇ?まつ、ってなんですか?」
「気にしないでください」
松、というのはつまり、依頼人のランクを表したものだ。梅、竹、松の3種に大別される。
身に着けているものや言葉遣い、その他諸々の要素から新八が判断し、銀時らに伝える。
そのランクによって、対応が若干違ってくるのだ。
これがいいことだという認識は流石にないけれど、新八の選り分けは鋭い。大概当たるのだ。
「じゃ、俺は奥行ってるわ。おいで定春」
は定春とともに和室に引っ込もうとする。が、それを止めたのは銀時だった。
「お前今日なんもねーんだろ?だったら銀さん手伝え」
「ぇー・・」
「おら、ここ座れや」
仕方なくは銀時の隣に腰掛ける。
真撰組での稼ぎがあるとはいえ、は万事屋に居候させてもらっている身なのだ。
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07.06.10 一部訂正