第2話
「で、今日はどーいったご用件で?」
依頼人を前にしても銀時の気だるさは変わらない。
しかし、新八がいうようにこの依頼人はどうやら竹クラスならしい。
彼の瞳の濁った光は影を潜めている。
「あの、私のペットを探していただきたいんです」
「と、いうと・・?」
新八が淹れたお茶でのどを潤してから、依頼主―――さやは言葉を続けた。
「モモっていうんですけど・・・お散歩に行ってるときに急にいなくなってしまって・・。あの子がいなくなってしまったら、私・・・ッ」
じわり、とさやの目に涙が滲む。
不意に差し出されたハンカチを受け取った彼女は、に小さく感謝を述べそれを目に押し当てた。
その様子を横目で見ていた銀時は、つまらない気分になる。
の言動はそこらの男(銀時自身を含む)なんかよりもずっと、オトコマエで。
今だっては気付いてないが、さやは蚊の鳴くような声でありがとう、と言ったとき頬染めているのだ。
「大丈夫ですよ。きっと俺たちがモモを見つけ出してみせますから、安心してください」
「ぁ、ありがとうございます・・っ!」
「(コイツまじで気付いてねーのかなー。もう顔真っ赤だってのによぉ・・天然たらしって奴ぁ性質が悪ィぜ、まったくよぉ)」
ずずず、とお茶を啜りながら銀時は胸のうちで毒づく。もう話なんざ聞いちゃいない。
「それで、モモってどんな子なんですか?写真とか、そういうのです」
「これです」
「「・・・・・・・・」」
「コスモポリタンサイクロンスペースダイナソーです。2歳のやんちゃ盛りで」
「銀さんゴメン、俺今日真撰組行かなくちゃならなくなって。急に」
「僕も、道場の掃除しなきゃ姉上に殺されるんで失礼します」
「定春、散歩いくアルよー」「わんっ」
「ま、待て待て待てぇええぇえ!お前らみんなして俺置いてくつもりっ? 万事屋銀ちゃんはお前らみんなそろってこその万事屋銀ちゃんであって、お前らのいない万事屋銀ちゃんなんてクソみたいなもんなんだって!
ほんと、クソ以下みたいなもんだから、お願い!銀さんを一人にしないでぇえ」
――――流石に、泣いちゃった銀時を放っていくわけにもいかず。
「えぇと・・・モモというのは、この子なんですよね、本当に」
「はい」
写真に写っていたのは全長、神楽大ほどのワニ。爬虫類独特の鋭い瞳孔はきらめく金色。
その牙は小ぶりのバナナぐらいはある。
首(どこから身体でどこから頭だかわからないけれど)にはピンク色の首輪がついており、
そこには「☆モモ☆」というなんとも可愛らしく、最高に不釣合いな刺繍がされている。
「ダイナソーって言ったよね?ダイナソーって。俺の記憶違いじゃなかったら、恐竜って意味だとおもったんだけど・・・違うよね?そんなまさか・・ねぇ?」
「意外だなー。銀さんちゃんとわかってるじゃん」
「こーゆー時に限って俺のばかぁああぁ!!」
「大丈夫です、モモは恐竜なんかじゃないです。大きめのトカゲです」
「これがトカゲに入るんだったらワニって何!?」
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