第5話


「―――・・と、いうわけでちゃんの歓迎パーティを始めたいと思いまぁああす!」

うぉおぉおお!と隊士の面々が叫ぶ様は、さながら年末の格闘技中継だ。 屯所の広間に隊士たちが上機嫌で酒杯をあおっている(まだ近藤局長の挨拶の途中なのだけど)。

「新八、神楽!肉食えるだけ食っとけ!」
「もちろんですよ。タッパー持参しましたから」
「久しぶりの肉アル!食いだめしないと意味ないネ」
、なんでてめぇら万事屋がここにいるんだろぉなぁあ?」

歓迎会も挨拶もなんのその、出された皿を片っ端から綺麗にしていく3人に凄んだ土方は手に真剣を携えている。 抜き身の白刃を銀時の喉元(料理を飲み込んでやけに活動している)に突きつける彼の目はかなりキレ気味だ。

「またてめぇが連れてきたのかよ!?」
「ち、違うし!気がついたらいたんだ」

濡れ衣はごめんだ、とは即刻否定する。 せっかくの宴会(もはや歓迎会ではない)で、土方の怒りを買うなんてことは避けたい。

「ウチのチャンに無理やり酒なんか飲ましてもらっちゃ困るんでなぁ。保護者としての参加だ、保護者としての、な」

そう言って銀時は隣で刺身をつついていたの肩を抱いた。「何すんだよ、食べにくいだろ」という彼女の拒絶にちかい(というか拒絶の)呟きはスルー。ぴくり、と土方の眉がはねる。

「・・ウチのに手出ししてもらっちゃ困るからよぉ」
「そうアル! は私のものアルよッ」
「神楽ちゃん、それなんか違うよ」

無言で視線を戦わせること数秒。チッと舌打ちをした土方は、ふいと視線を逸らし苦虫を噛み潰したような渋面を広げた。

「さて、お邪魔ものがいなくなったところで・・・、これ飲め」
「ってテメェが酒飲まそうとしてんじゃねぇかこらぁああ!!」



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チャン、飲んでるか?」
「ぁ、近藤局長・・・」
「もうちょっと早い時期にやろうと思ってたんだが・・なかなか時間がとれなくて、悪かった」
「や、全然俺いいです! 今やってもらえるだけでも十分嬉しいですし」
「そうか?ならよかった」

にっこり、と近藤が笑う。この人の笑顔はあたたかい。 おっさん臭いのは否めないが、それを加味しても十分すぎるほど度量が大きくて、器が立派だとは思う。

「今すごく楽しいっすよ、俺」

だから、この人には笑顔を返したくなる。 女の人に滅法弱くて、妙ねえに対する愛情はもはやストーカーでしかないが、真撰組を率いていくだけの人間であることは疑いようがない。

「そうか。実はちょっと心配だったんだ。女の子だし、あいつらと上手くやっていけるかどうか・・でも、そんな心配は要らなかったみたいだな」
「はは、もう馴染みまくってますよ」

近藤は知っている。 が真撰組に出入りするようになってから、沖田の表情がやわらかくなったことや、土方が前よりも無愛想でなくなったことを。 もちろん、彼女が指南役となったことで一般隊士たちの意気も腕もあがった。 かなりハードな荒稽古のおかげだろうか、ケガ人もかなり減っている。 自分たちよりも強い相手が現れたことで、各隊長も己の腕をより磨けるようになっているし。

「感謝してるんだ。ありがとう」
「そ、そんなやめてください局長!」

顔を赤くしたは、目の前にあった水の入ったグラスを手に取り、頬に宿った熱を取ろうと一気に飲み干した。

「ちょ、ちょっと待ってちゃん! それ、お酒ッ!!


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