第6話
慌てて近藤が制止をかけても時既に遅し。
はグラスになみなみと注がれていたお酒を、最後の一滴まで喉に流し込んでいた。
近藤の大きな声に、場がしんと静まり返る。全員の注目は今や、ただ一人に注がれている。
「・・・は、」
グラスから唇を離し、名残惜しそうにその縁を舌で舐めて。
化粧も何もしていないはずなのに、赤く染まった唇の間からため息が漏れて・・・その様はあまりにも。
「(・・・・い、色っぽ・・・ッ)」
長い黒髪を一つに結わえ、袴を身に着けているの姿は確かに美少年で、それが相まってなんというか、つまり・・・・危ない雰囲気だ。
道を誤ってしまいかねないような色気がある(実際には、は女の子なのだから道を間違えるというのはおかしいのだけれども)。
「ぉ、おい?大丈夫か、ちゃん・・?」
「―――・・局長?」
近藤をゆったりとが見上げる。その声にも普段とは違う艶があるような・・・。
「だ、だいじ「局長、ボクが注いであげるっ!」
ぴしり。
「ああああ、ああの・・・ちゃ「ホラ、飲んで近藤さんっ。ボクが注いだんだよ? すごいでしょ?」
なにがすごいんだかわからない。でも、そういって小首を傾げるは、激烈にかわいくて。
「いいいや、俺にはお妙さんという心に決めた人が・・・!」
何の話をしているんだ近藤。
「・・・ボクが注いだのは、飲んでくれないの?」
うりゅ、という効果音がついてきても違和感がまったくない。の瞳が一気に涙で濡れる。
「飲みます! ぜひいただきま「、こっちに来なせェ」
その声につられてが沖田に顔を上げたとき。
顔を真っ赤に染め上げた近藤は、バズーカの砲撃に巻き込まれて沈んだ。
「なぁに?総悟」
沖田の手招きにおとなしく従い、彼の隣に腰を落ち着けたは(ちなみに今の今までそこらに座っていた隊士らは、沖田の無言の圧力にあてられてすべて移動している)、
普段の振る舞いからは考えられないほど可愛らしく、小首を傾げた。
酔うと首をかくんかくんと折るのはどうやら癖ならしい。
「俺にも注いでくだせェ」
「ぅんっ!いいよ、注いであげるーっ」
にこーっとが笑った。普段とはちょっと雰囲気の違った、満面の笑みである。
寺子屋に通う前の子供にすら最近では見かけなくなりつつあるほど、真っ白な、背景にはたんぽぽの花が似合う無邪気さで。
「についでもらった酒は、特別に美味いでさァ」
お猪口に注がれた酒を舌の先で舐めるように飲んで、沖田はそうお世辞でもなく言った。
確かにもともとこの酒は美酒として有名ではあるけれど・・・・どこか違う。
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