第2話
「って父さァアアアん!? 何してんの、なんで猿轡なんか噛まされてんの!? しかも何このかったい結び目!」
総悟母さんの部屋に入って一番にの目に付いたのが、
哀しきかな、両手を後ろ手にキツく縛られ、念入りに猿轡までかまされた父親の姿でした。
「なんで!? ロリコンかもしんないけど、父さん一応領主だろ! なんでこんなことに「俺でさァ」
なんとか猿轡だけでも取り除いたでしたが、カチ、と固まってしまいました。
恐る恐る、ギギギ・・と音がしそうなほど固まった首をゆっくりと後ろへ捻ると。
そこには晴れ晴れとした笑みを浮かべた、総悟母さんの姿がありました。
「な、ななななんで・・・・・?」
「あ? その野郎、俺に抱きついてきやがったんですぜィ? 男でしかも中年で、腹に脂肪溜め込んだブタになんざ、正気の沙汰じゃねェや」
―――・・確かにそうです。確かに、そのとおりなんですが・・・・・
「母さんは、父さんと再婚したんだよな・・?」
「そうですぜィ。遺産目当てに」
「殺る気マンマンですか!?」
せめて財産欲しさにと言って欲しかった、とは思いました。
「い、いいんだよ・・・」
「父さん・・・」
「父さんはそんな母さんがよくて、再婚したんだから☆」
「・・・・・・」
まさかのカミングアウトでした。
それまで尊敬していた父親がロリコンで、しかも結構度のきついMだと知ったときの娘の気持ちなんて、わかるはずもありません。
はこの場で腹を切りたい衝動に駆られました。
「抱くならコッチのがいいや」
「うわっ!?」
ぐいっ、と突然引っ張られたはバランスを崩し、引かれるままになってしまいました。
あわや床とディープキスかと思われたのですが万事休す。
は天蓋付きの大きな寝台の上に押し伏せられていました。
寝台に仰向けに投げ出されたが上半身を起こすよりも早く、その視界を埋めたのは総悟母さん。
「な・・・っ」
「あんなオッサンなんかより、がいい」
ス・・、と総悟母さんの手がの頬を包み込みます。
まるでガラス細工に触れるように手を触れさせ、互いの吐息が混じるほど近くに顔を寄せて。
切なげに目を細め、そっとの名を耳元に囁いて。
「ちょ・・、何やってんだよバカ総悟!こんなの台本にないだろ!?」
「あ?何言ってんですかィ。ありやしたぜ」
「ないって!こんなシーン無かった!」
「、あのカンペ見なせェ」
「・・・『面白いから続行♪』・・あ、あンのクソ監督・・・・!」
「静かに」
「・・・・」
聞こえるか聞こえないか・・・そんな総悟母さんの声がに降り注ぎます。
そしてだんだんと、ゆっくりと顔を寄せて―――二人の影が重なるまであと、・・・・・
「ワタシのに、何さらしてくれてるアルかーっ!!」
がっしゃぁああん、と盛大な音が響き渡って。
ハッとして見ればステンドグラスが派手に割られ、あたりにガラスの破片が散らばっています。
「ワタシのに何してるカ!? さっさと離れるアル、この変態〜ッ!」
「神楽!!」
「うわ、コラ止めろチャイナ!地味にイテェ!」
手のひらサイズの真っ白な小鳥が、総悟母さんの頭をその鋭いくちばしでつついています。
「神楽!ありがとう、ホントまじでありがとう!!助かった!」
「気にしなくていいネ、」
神楽という名の白い小鳥は、なぜだか人語を解し、また喋ることができました。
そして彼女は、母親Aが亡くなってからふさぎこみ気味だったの話し相手となり、支えてくれた友達でもありました。
「で、。コイツどうするアル?煮て食うカ?」
時々言葉が辛辣極まりないのはご愛嬌です。
「ううん、いい。腹壊しそうだから」
も大概失礼な娘でした。
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