第3話
「、知ってるアルか?」
「何を?」
午後3時。はぽかぽかした木漏れ日の下のテラスに座り、小鳥の神楽はその向かいにちょこんと座り込んでいます。
広げられているのはケーキやクッキー・・・・ではなく、塩豆大福。
の前にはその包みが1枚だけあるのに対し、神楽の前にはすでに4枚の包み紙が散らばっています。
普遍の真理であるはずの質量保存の法則は、神楽の前ではゴミ屑よりも無意味でした。
「万事屋王国の王子様が、ダンパ開くらしいネ」
「・・・ダンパって、すげー久しぶりな単語だな」
の父さん―――ロリコンにマゾ疑惑まで浮上したこの地域の領主は、万事屋王国の女王・お登勢から領地の自治を任せられています。
お登勢が総理大臣だとしたら、の父さんは県知事といったぐあいでしょうか。
「それにしても、なんでこの時期に?誕生日とかだっけ?」
「違うアル。王子様の花嫁探しネ」
万事屋王国の王子、銀時はいい年こいてまだ独り身でした。
テレビのアナウンサーに熱をあげる一方で、家臣の娘にとりあえず手を出しておきながら、そこからの発展性がまるでないというダメっぷりだったのです。
そんな銀時の様子に弱りきっているのは、一刻も早く世継ぎの誕生を心待ちにするお登勢と、つまみ食い程度で手塩にかけて育てた娘に手をつけられた家臣たちでした。
"この際どんな娘でもいいからさっさと身を固めてしまわないと、面倒なことになる"
そう判断した女王とその家臣たちは、古くから懇意にしている真撰組王国の王子、土方を招いて、銀時の花嫁探しという名目の舞踏会を開こうと考えたのです。
ここでどうして他国である真撰組王国の王子が出てくるかといえば、
万事屋王国において銀時よりも土方のほうが人気があり、イイ女の子が揃うからという合コン的な理由からでした。
「ふーん・・・ダンパねェ」
「はダンパ、出ないアルか?」
「興味ない」
即答でした。
菓子入れにいれられていた煎餅の袋を開けると、なんの躊躇いも無くバリバリと音をたてながら食べ始めます。
興味ない、という言葉をまさに体現しています。
「なんか、その時剣の試合もするらしいアルよ」
「行きてェ、ソレ!」
舞踏会へ行ってステキなドレスを着ることよりも、は剣で王国中の一番になるこのほうがずっと興味がありました。
気だるげだったの瞳は、キラキラと輝いています。
「・・・・、今更アルけど、は何かが根本的におかしいと思うネ」
「・・・・総悟母さんに相談してこよーっと」
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