第5話


「何!?お妙さんはあの王子のダンパに行ったのか!?」
「そうアル。をひとり置いて、あのサド母親と化け物と男引っ掛けに行ったあるネ」

ダメダメね、との肩に乗って呟く小鳥を見ながら、は神楽の将来が少し心配になりました。

「許せん・・、死んだ魚の目をした天パのくせに、お妙さんを・・っ!」
ゴリラに言われたかないアルね

怒りの炎を燃え上がらせた近藤が、突然の両肩を掴みました。

ちゃんはダンパに行きたくないのかい!?」
「え、うん。俺は試合に出たい」

はいまだ、試合に出られなかったことを本気で悔しがっていました。

「そうだよな、出たいよな!?いいんだよ、俺には本音を言って」
「試合に出て強い奴と勝負して、優勝したい!」
「そうかー、出たいか!ダンパに!!
無視?

突如湧いて現れたゴリラ近藤・・もとい魔女近藤は、ビシィッと指をさしてこう言いました。

「よし、その願い俺が叶えてやろう!」
「・・人に向かって指さしちゃダメって教わらなかったか?」
ぃイダダダダ!いたッ、痛いよ!指はその方向には曲がらないって!ソレが限界!!」

は無自覚でしたが、確実にそして着実に、義理の母親の影響を受けていました。 涙目になった近藤でしたが、気を取り直してこう言い直します。

ちゃん、俺がちゃんをダンパに連れてってあげよう」
・・・・試合のがいい
「よかったアルね、!美味しいご飯たくさん食べれるアルよ!」

の台詞は、近藤と神楽によって黙殺されました。

「ドレスがお買い得価格!さーらーにーッ」
「・・・!?」
「今なら馬車やガラスの靴、その他諸々セットでお安くなってます!」
「買ったネーッ!!」

置いてけぼりのをよそに、神楽と近藤はどんどん話を進めていきます。二人のノリはもはや深夜の通販です。

「んー・・ちゃんだったら、ピンクとか似合いそうじゃないか?」
「ハッ、ダメダメねゴリラ
「ねぇ、俺一度でも自分のことゴリラって言った?魔女って言ったよね」
は白に決まってるアル!純粋・可憐・純潔を表す白のドレスあるヨ」
「・・神楽、俺が自分でいうのもなんだけど、最後の一言は要らないんじゃない?」

近藤が杖を一振りすると、杖の先から光がのびてを包みます。

「え・・!?うわっ」

その光が空気の中に散って消えたとき、は純白のドレスを身につけていました。 大きく開いた襟ぐりからは鎖骨がのぞき、肩口からはすらりとした手が伸びています。 さらに、いつも一つに結わえている髪は上げられ、頭の上にはティアラが輝き、足元にはガラスの靴がその存在を控えめながらも主張していました。 誰もが認めるであろう、良家のご令嬢のできあがりです。

「キレーあるヨ、!女の子にしか見えないアル!」
「・・神楽、褒めながらさり気なく普段の俺をけなしてるって気付いてるか?」

できあがったを見て、満足そうにうなずきながらもお妙さんには敵わないな、などとブツブツ呟いていた近藤でしたが、ハッと思い出したように言いました。

「大事なこと忘れてた!カボチャある!?」
「・・・カボチャ?」

ポケットの中から近藤が出してきたのは、
"今ならカボチャの馬車もセットで、自慢の娘をダンパに!―――ご連絡は西の森に住む魔女まで。料金プラン相談可"
とかかれたチラシ。

「「・・・・」」
「ンな目ェされても、魔女だって生活大変なの!こーゆー営業で暮らしつないでんの!」

と神楽の二人は、すべてが終わったあかつきにはこの魔女を血祭りにあげてやろうと誓いました。

「カボチャはないけど・・・・」
「あーうん、まぁカボチャじゃなくても代わりになるのなら「ナスしかない

三人の間を、冷たい風が吹きぬけていきました。

「ナス・・・なんでよりによって、ナス?
「知らないよ、そんなの・・。冷蔵庫見たらそれしか入ってなかった」
「この家、ホントぐだぐだネ」

一つのナスを囲んで三人はため息を吐き出します。 大根とどっちがよかっただろうかとは思いました。せめてニンジンだったらよかったのに、とも思いました。

「・・ナスで行くしかないか」
「頑張るアルよ、ゴリラ!デザインがよかったらなんとでもなるアル!」

深いため息を吐き出した近藤でしたが、諦めたように杖を振りました。 杖から放たれた光が、ナスを包み、むくむくとその質量を増やします。 目を覆いたくなるほどの白い光が収束したとき、三人の目の前にあったのは―――。

「あー・・・うん。まぁ馬車かな・・・・・、ギリで

本家本元の馬車はこぉ・・・ふっくらしていてオレンジ色でなんかカボチャのクセにかわいいイメージ。 今現在、目の前にあるのはドぎつい紫色をしたつるっつるの馬車。 ワックス塗ってんの?と聞きたくなってしまうほど、テカテカでした。けれど、まぁ・・・・馬車と言われれば馬車かな、みたいな。

「じゃあコレに乗ってダンパいくアル、!金ありそうな男のメアドちゃんとゲットしてくるあるヨ!!」

本気で将来が心配になってしまう神楽の台詞に見送られて、合コン舞踏会へと出発したのでした。


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