第6話


己の父親の首に刀を押し当てる容疑者・・・・丸井元積は、玄関の戸を蹴破ってらの前に現れた。 気弱そうな写真の彼とは対照的に、目が狂気に輝いている。

「真撰組かぁ・・・・ま、ちょーどいい腕ならしにはなるだろーな」

にた、と口元を歪める。くっくっく・・と低く嗤い声を立てて、それが取り囲むものたちの気を逆なでする。

「へぇ、大層なこと言うじゃねーか。この人数に一人で勝てるとでも思ってんのかよ」
「ああ、思ってるな。よゆーすぎてつまらねーよ」

いらいらと、土方が煙草を噛み潰す。

「見ろよ、この力」

勝ち誇ったように笑いを浮かべる丸井が、刀を自宅に向かって振り下ろした。 ―――と、信じられないことが起こる。 刀の先から炎が迸り、それが刀身よりもはるかに巨大な刀となって建物を一刀両断したのだ。 すっぱりと一刀両断の下に切り離された家は轟音を立てて崩れ落ち、立ちのぼる火炎に包まれていく。 まるで生き物のように、炎がすべてを飲み込んでいく。人質になっていた依頼人は気を失って泡を吹いて倒れてしまった。

「これが、お前らなんかには敵うわけのねぇ俺のちか「それはお前の力じゃない」

丸井の声だけが聞こえる中、それを断ち切るの声。凛とした強さに満ちた彼女の声が、朗々と響く。

「それは、宝珠の力だ。お前は宝珠の力を使っているだけだ」
「知ったような口利きやがって・・斬るぞコラ」
「やれよ」

間髪いれずにが答える。 肌を刺すような殺気の応酬。 さすがに聞いていられなくなった沖田が口を挟もうとしたとき、それを止めたのは銀時だった。

「何すんですかィ、旦那。いくらと言えどもあれは「見てろよ」

くいっと銀時があごでしゃくる。口元に笑みすら浮かんでいるような気がするのは、沖田の気のせいだろうか。

「あいつは・・・お前らが思ってるほどヤワじゃねー」


「やれるんなら、やれよ。宝珠の力を引き出せやしないお前に、俺が斬れるんならな」

のその言葉に、丸井はクッと口角を上げた。目に殺意が宿る。 けれどそんなのよりもはるかに。はるかに強く、の目が物騒な戦意に爛々と輝いた。

「教えてやるよ。宝珠ってのはな・・・・こうして使うんだ!」


翔けろ、雀鴻!!




渦巻く風。視界を奪うほどの白い光が収束し、象るのは巨大な鳥の姿。 天を仰ぎ、雀鴻が吼える。 頭が割れるかと思うほどの強烈な叫びが、その場にいる誰の耳にも届く。 目の前に現れたものに疑問を挟む余地などない。 理屈ではない、頭のどこかですとんと理解できてしまう高尚な存在。 ただその場にいるだけで圧倒される、巨大な力。 立っていることさえ難しくさせるような強烈な風が天から吹き降ろし、未だしぶとく建物を嘗めていた炎を消し去った。 の怒りが、戦意が召喚獣へと引き継がれ、それは相対するものの畏怖へと直結する。 その感情を感じさせない鋭利な瞳が丸井を捉えたとき。その手から刀と紅くて丸い石――宝珠が滑り落ちた。

「返してもらう。これは、俺のものだ」


novel/next