第1話
は運命のこの日、朝一番に鳴り響いた電話で心地よい睡眠から叩き起こされた。
時刻はAM 7:50。
確かに電話口に向かって「テメェふざけんな、今何時だと思ってやがんだコノヤロー!」と怒鳴る時間帯ではないが、安眠を妨げられたことには違いない。
しかも、万事屋銀ちゃんの店主であるはずの銀時はこの電話に応対するつもりがないのか、彼が寝室として使っている和室は静まり返ったままで。
「・・・何コレ。なんか見覚えあるんだけどこの始まり方」
まさかまるっとコピーアンドペーストしたんじゃないかなんて、そんなことは気のせいである。まったくの、気のせいである。
だからこの企画小説を読み終わった後に、10000Hit企画夢を読んではいけない。
無視しよう、と布団に頭から潜り込んで目を塞ぎ耳を覆って知らない振りを決め込んだだが、そんな彼女は突然布団の上から圧し掛かってきた物体に思わず声を漏らす。
神楽が起き出して来たのだろうかと思ったが、昨夜は妙ねえのところに泊まっていて、だから万事屋はと銀時の二人っきりのはずである。まったく、昨日の夜は随分おとなしくしているなと思ったらコレか。
何度も撃退してきたから懲りたのかと思ったのだが、時間を変えればどうにかなるなんて甘すぎる。
これは一つ、きついお灸を据えてやらねばなるまい。
「う・・っぜェエエ! どけぇッ、重いんだよテメ・・・・・っ!?」
がばぁっと跳ね起きたが目撃したのは、布団の上から自分にまたがってきょとんとしている―――13歳くらいの銀髪少年。
見覚えがあるにもほどがあるぞこの展開・・! ありえない、もしかしてもしかしなくても、目の前でにんまりと笑う少年は。
「・・銀、さん・・・?」
「はよ、!」
頭痛がする。このまるでデジャヴのような展開は25000Hitしたからなのか。
そうだとしたら疑問を挟む余地などないほど、とあることも付随して確定する。
きっと、しつこくなり続けるこの電話の主は・・・。
『さん、山崎です! ま、また副長と沖田隊長が・・・・ッ!』
それ見たことか。皆まで言わずとももう分かる。
「・・・・山崎、その小さくなった土方さんと総悟連れて、万事屋来て・・・」
『え、わかるんですか!?』
「ウチにも、見慣れないようでとっくに見飽きた白髪のガキがいるんだよ・・・」
前回の経験上、おそらく銀さんと土方さんは同じくらいのガキで総悟はそれより2,3歳下にまで退行しているのだろう。
前回同様、その年代にまで記憶が遡っているのかと思いきや、ガキ銀時は確かに俺のことを「」と呼んだ。
どういうことか本人に確かめたところ、確かに記憶は13歳くらいにまで戻っているらしいが、前に8歳くらいに退行したときのことを覚えているようだ。
だがまぁそんなことが分かったからといって別にどうということもない。
一番重要なのはこのガキ共の面倒を見るのは誰か、ということである・・・・が、前回の流れに見事なまでに沿っている今回も、ガキ共の面倒を見るのはきっと自分なのだろう。
まったくどうしていつも自分ばかりがこう貧乏くじを引かねばならないのか。
最近、茶屋のウェイトレスの子に借りた漫画ではないが、器用貧乏とはおそらく自分のような人間も含まれるに違いない。
別に俺は、真紅の髪のエロ河童でもないし、一見爽やか好青年、しかし実は腹黒毒舌という側面を持った保父さんでもないが。
「よ、また会ったな。ガキ共め」
「うるせぇ、ガキなんかじゃねーよ」
「土方コノヤローといっしょにするのはやめろィ!」
「はいはい、わかったから。お前らとりあえず向こう行ってろ」
シッシッと手で追い払えば、二人ともさも不愉快そうに表情をゆがめる。
口を開こうとした沖田の襟足をひっつかみ、奥の部屋へと彼を引き摺っていく土方はあのときから更に一歩大人らしくなっているらしい。
2X歳の土方さんより、13歳の土方のほうがよっぽど大人な振る舞いだ。
「・・・で、こいつら預かってりゃいいんだろ?」
「す、すいません・・・」
へらりとした表情を浮かべ、頭をかく山崎は朝っぱらだというのに着物のあちこちを土で汚し、しかも頬に一筋の傷跡までつけている。
真撰組屯所から万事屋までのそう長くはない距離を、随分と苦労してきたらしい。
「まぁ銀さんもあんなんだし・・・引き受けてやるよ」
「本当にありがとうございます・・! もう屯所とかしっちゃかめっちゃかで・・・」
「だろーなぁ。ただし・・・落ち着いたら、三春屋の大福おごれよ?」
さて、報酬は約束した。
いささか安すぎるような気もするが、山崎に請求するのはお門違いだろうと思う。請求するなら、戻ったときこいつら3人に思う存分たかればよい。
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