第2話


「な、
「ん? なんか気になることでもあんの? ルーク」
「いや、気になるっつーかさ・・・・あのオッサン、もしかしてすげぇ金持ちだったりすんのか?」
「ああ、ジェイドのこと?」

オッサン、の一言でジェイドのことだと判断した。 本人にばれたら「おや、オッサンとは失礼ですね。大体男の魅力というものは、年齢を重ねるにつれ奥深くなっていくものです。それがわからないとは・・・まだまだ子供ですね」やれやれ困ったものだ、とでも抜かしそうなオッサンが鮮明に浮かんで、はすぐさまその想像を打ち消した。

「そーだよ、すげぇ金持ち。・・・見たまんまだろ?」
「・・・確かに」

肩まである明るい栗色の長髪、肌荒れひとつない白い肌、いかにも質のよさそうな服・・・・これで貧乏さんだったらいっそ笑える。 生活苦のジェイド―――その言葉の並びだけで漏れそうになる笑いを止めるのが大変だ。

「ジェイドー! 来たよー!」
「ああ、お疲れ様です・・・・って、バカ猫も一緒ですか」
「バカ猫ってなんだ、バカ猫って!」
「置いてくわけにもいかないだろー。拗ねられたら厄介だし」
「な・・ッ、拗ねたりなんかしねーっつの! バカにすんな!」
「はいはい、バカ猫は置いておくとして・・・それより、」

うん?、と靴を脱ぎながら言葉の先に視線を向けて。出会うのは酷く柔らかな空気を纏った微笑。

「・・・おかえりなさい。」
―――うん。ただいま」


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「うわ、すげーでっけぇこのテレビ!」

より先にリビングに走ったルークは、そこにでんと据えられている液晶パノラマテレビを前に興奮した声を上げる。 テレビ台に前足をかけ、後ろ足2本で体重を支えるようにしてテレビを食い入るように見つめるルークは、その様子に苦笑するを振り返った。

「すげぇなこれ! お前ン家のとは全然違ェな!」
「・・あのな、こんなでかいのあの部屋に置いてみろ。ギリギリ玄関通ったとしても、方向転換できないぞ」
「おお、確かに言えてる!」

けらけらと笑い声を上げたルークだが、突然首根っこを持ち上げられて悲鳴をあげる。 抵抗する4本の足はただ宙をかくだけで、じたばた暴れてみても何の効果も得られそうにない。

「やめろっつってんだろオッサン! は、な、せぇえええ!」
「そう言われましても、家具に傷つけられたら困るもので」
「傷なんかつけねーっての! 爪出してねぇもん!」
「おや、貴方にそんな配慮ができたとは・・・意外ですね」
に散々怒られたからな!」

ルーク、それは威張って言うことではないよ。 見てご覧、ジェイドの紅の瞳が「・・・ああ、やはりバカ猫ですね」とでも言いたそうにしているじゃあないか。

「でももう大丈夫だよな、!」
「そーだな。・・ジェイド、大丈夫だと思うよ」
「・・がそう言うなら、信じましょう」

今はもう、柱で爪研いだりするバカな真似はしないもんなー、とルークに笑いかけるを、ジェイドはメガネの奥から気付かれぬよう窺う。 どうも最近、あの見るからにバカ面晒した世間知らずのわがまま猫に対しての対応が甘い気がする。 ほら、に撫でられているときのあのバカ猫の顔・・・・スプラッシュかもしくはFOF属性攻撃お見舞いしてやりたくなってくるではないか。

「・・・生意気ですねーっ」
「いひゃいいひゃい! いきなり何すんだよオッサン、引っ張んなっつーの!」
「ああすみません、貴方の顔を見ていたらつい」
「“つい”ってなに!? つーか何だよその誠意のかけらも感じない謝罪!」
「誠意のかけらもこもってないからじゃないですか?」
「な・・っ! 〜〜〜っ、ー!」
「はいはい、わかったから。ジェイドもルークからかって遊ぶのやめろよ」
「若者をからかうのは趣味なんです」
「・・俺アイツ嫌い」
「奇遇ですね、私もです」
「ああもう、やめろって言ってんだろ? ほらルーク、こっちおいで」

差し伸べられた彼女の手にすぐさま駆け出すバカ猫。 こう・・・わざと尻尾の先っちょだけ踏みつけてやりたくなる。 そんなことをしたら今度こそ大人気ないと呆れられるだろうからしないが、まぁいつかそのうち。
大体、不可抗力だったとは言えと一晩、床を共にしているのだ―――しかもバカ猫のほうは素っ裸で。 人間のガキになった様はどうやら17そこそこならしいが、頭の中は7歳児くらいとみて間違いなさそうである。 間違いが起きた様子はないが、これからのことはわからない。 ・・・まぁ、限りなくゼロに近いというか、ゼロ以外の数字など、天地がひっくり返ろうが地球が割れようが日本が沈もうが認めないけれど。

「あのなぁルーク。お前がジェイドに口で挑んだって勝てるわけないだろ」
「・・・だってあいつムカつく」
「だからってなんか言ってみろ、ムカつき溜まっていくだけなんだから」
「・・・・・・」
「“経験者は語る”・・・俺が言うんだから間違いな? 今なにか言いましたか?」
「さぁルーク! 俺の部屋を案内してあげよう!」


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